[体験レポート]産創館のモニター会を主催して、英会話サービスの定性調査を実施しました
中小企業のマーケティングを展開するとき、難しいのが「調査」です。
近年は格安で定量調査を実現できるサービスが増えていて助かる一方、定性調査を行うのはまだまだ簡単ではありません。
既存顧客のいるサービスの場合は、既存顧客の中から数名にお願いして調査をすることが有効です。しかし、新商品の定性調査を行うためには、適切なモニター参加者を自分たちで用意する必要があります。
資金力のある企業なら、定性調査のためにマーケティングリサーチの会社へ委託することも可能ですが、大体1回あたり100万円以上の費用がかかってしまうもの。
中小企業が定性調査を委託することは現実的ではありません……。
という、そんなお悩みを解決してくれる素敵なサービスがあります。
それが大阪産業創造館(通称:産創館)の「サンソウカンdeモニター会」
大阪市内に拠点を構えている企業なら、6名程度のモニター調査を【無料で】実施することができるという、起業家にとっては非常にありがたいサービスがあります。
もう一度言いますが、【無料】です。仲介手数料とか、産創館への謝礼と行ったものは一切ありません。
※参加者への謝礼品は必要になります。
去る6月某日、私(めかる)もクライアントと一緒にモニター会を主催し、午前・午後あわせて12名の方にインタビューを実施しました。
準備から実施までおよそ3ヶ月要しましたが、産創館の担当者の方が実施まで親身に伴走してくださり、「大阪に税金払っててよかった」と思えるような素晴らしい経験になりました。
もし実施を検討されている方の参考になればと思い、ここに体験レポートをまとめておきます。
1.モニター会とは
モニター会とは、一般消費者に自社の商品やサービスを体験してもらい、フィードバックをもらう「マーケティング・リサーチ」の手法の一つです。
たとえば新商品を作ってリリースする時、「本当にお客さんはいるのかな?」「私達はすごくいい商品を作ったと思っているけど、お客さんはどう思っているのかな?」なんて心配になりますよね。
そういうときに実施して、お客さんの生の声を聞くのがモニター会です。
モニター会を実施すると、商品・サービスの改善点が浮き彫りになります。そこで商品コンセプトや機能の改善点や、リリースまでにやるべきことを明確化することができるのです。
こんな人におすすめ
- 新しいサービスを思いついたので、集客しつつサービスを改善していきたい方
- アジャイル型のサービス開発をしていきたい方
- 既存サービスがコモディティ化してしまったので、新しい付加価値を模索している方
※注意1:ただし、サンソウカンdeモニター会では、リリース前の商品のモニター調査はできないようです(2023年6月時点)。小さくてもいいのでリリースした状態が望ましいかもしれません。
※注意2:そもそもマーケティング戦略の方向性が一切決まっていない場合は、有効な回答が得られないと思います。最低限「誰の、どんな課題を解決する商品か」を、仮説ベースでもいいのでまとめて置くことが大事です。
2.産創館でモニター会を実施するメリット
産創館のモニター会はマジでおすすめです。迷うぐらいなら、思い切ってやっちゃいましょう。
個人的にはこんなメリットを感じました。
メリット1.「お客様はこんなことを考えていたんだ!」という発見がある。インサイトに近づける。
これが一番のメリットです。ちょっと具体的な話をします。
今回モニター会を実施したのは、私がマーケティングまわりをお手伝いしている、子供向け英会話教室でした。
この教室の英会話サービスは少し特殊で、「子供だけでなく、保護者にも一緒に英語を勉強してもらうことで、家の中を英語漬けにする」というコンセプトを掲げています。
そこで問題なのが「保護者は一緒に勉強したいと思っているのか」と「保護者はどんな形なら勉強できるのか」という2点。
この2点について、さまざまな観点から質問を投げかけるためにモニター会を利用しました。
結果としては、私達の仮説にも正しい部分もあれば、ちょっと違う部分も明確になりました(このあたりは企業秘密なので詳しく書くことができません。ご了承ください)。
「お客様って、わたしたちの想像以上に【こんなこと】に課題を抱えていたんだなあ」という発見があり、さっそくサービスの改善に取り組むことができました。
いわゆる「インサイト」へ近づくことができた、そんな実感がありました。
メリット2.チームメンバー全員が「対象顧客」の姿を見るので、統一見解を持つことができる。
チームとして事業を動かしていく上で重要なのは、お客様の解像度を高めることです。
その点、モニター会はとても有効です。「対象顧客」を非常に具体的に把握することができます。
私達もこれまで仮説ベースでマーケティング戦略を描いてきましたが、
「本当にその人は私達のサービスのターゲットなのか……?」
「この議論をつづけるより、お客様に話を聞いたほうが早いんじゃないか?」
という場面には何度も直面しました。
モニター会を1回やって、チームメンバー全員の「対象顧客」の姿が一つにまとまれば、議論もショートカットできますし、組織として同じ方向を向いて行動しやすくなります。
メリット3.仮説検証の場になる。
ちょっと前項と重なってしまいますが、仮説検証の場としてモニター会を活用することができます。
新商品のマーケティング戦略策定は「仮説ベース」です。
基本的には、マーケティング試作が当たるかどうかというのはかなり確率論です。だから、「こういう仮説がある、だからやってみる、その結果を踏まえて、次の試作を考える」の繰り返しになります。
モニター会は、仮説を一般消費者にぶつけて、そのフィードバックを直接もらい、更に「それならこの仮説はどうですか?」と聞き返すことができます。
たとえば私達のケースでは
「こうすれば保護者も英語の勉強ができると思いますけど、やれそうですか?」
(保護者からの否定的なフィードバックを受けて)「では、こういうサービスの内容だったら、できると思いますか?」
(少し前向きなフィードバックを受けて)「では、こうすればできそうじゃないですか?」
のように、フィードバックを受けながら更に仮説を立てて打ち返していくラリーが生じました。
通常、お客様にたいしてこれほどあけすけにフィードバックを求めることは難しいので、利害関係のない立場として率直な意見を聞くことができるモニター会はとても有効です。
メリット4.産創館モニター会はマジ激安。
産創館の担当者が、定性調査用のパネラーを用意し、質問も一緒に考えてくれて、当日の運営のアドバイスやサポートまで手伝ってくれます。
工数としては数十時間かかっているはずですが、それが無料です。マジ激安です。それだけ。
もちろんデメリットもある
- チーム一丸となって、合意を得ながら進めていかないと大変
- 関係者が増えすぎると合意形成に時間がかかる(ただし、産創館に限った問題ではない)
- 産創館はリサーチ会社ではないため、自力でずんずん進める度量が必要になる
- かなり手探りで進めた。リサーチ以外の業務もあるから、参考図書は2冊に絞って何度も読み返すようにした。
- 話を広げたり、質問で掘り下げる技術が求められる
- モニター参加者の中に、自分からどんどん発言してくれる人がいると助かる。逆に、みんなが戸惑いながら話すようになると大変。
デメリットはいくつかありますが、これらを乗り越えていくと、チームとしての団結感が高まります(けっこうたいへんだから)。
事業がマンネリ化しているなら、あえて取り組むのもいいかもしれません。
3.モニター会実施の流れ
私たちの場合、「モニター会をやりたい」と産創館に問い合わせてから実施まで、およそ3ヶ月かかりました。
タイムラインとしてはこんな感じです。
最初の問い合わせ
「サンソウカンdeモニター会」の実施者向けパンフレットは、サンプル商品など「形のある」商品を意識して書かれています。英会話のようなサービスが販売できるのか、メールで確認しました。
担当の方から、「サービスのモニター会も開催できる」「過去にはスマホアプリなどで実施した実績がある」というご連絡をいただきました。
1回めの打ち合わせ
産創館にて、第1回の打ち合わせをおこないました。産創館から出席するのは担当の方1名のみ。
打ち合わせでは、担当者さんからモニター会について説明を受けました。また、モニター会で調査したい商品について詳細のヒアリングがありました。
この打ち合わせの内容を踏まえて、モニター会が開催可能か否かを担当部署が判断するとのことでした。よほどの商品でなければ大丈夫だと思います。
この時点では「早ければ1ヶ月以内で開催できます」というお話があったのですが……私たち側のほうで準備することがとても多くて、それは叶いませんでした。
2回めの打ち合わせ
実施に当たって必要な書類を提出すると同時に、実施日程を確定しました。また、モニター会実施に向けた準備を進めながら出てきた疑問をまとめておいて、担当者さんにいっぺんに質問することができました。
モニター会の担当者さんはコロコロ変わることなく、1社に付ききりになってくれます。小さなことから大きなことまで質問に全部回答してくださるありがたい方でした。
この打ち合わせの後、社内で本格的に準備が始まります。関係者にモニター会を実施する旨を伝え、企画を考えてもらったり、一緒に質問内容を考えたりします。
チームの協力なしでは、モニター会は開催できません。
ひとまずモニター会の当日スケジュールを決めて、産創館の担当者さんへメールで連絡しました。
3回目の打ち合わせ(中小企業診断士同伴)
産創館のほうで、マーケティング・リサーチにつよい中小企業診断士との打ち合わせをセッティングしてくれました。アンケートの作成が目的です。
アンケートには2種類あります。
1つ目は「参加者を選別するためのアンケート」。モニター会の参加者を選ぶために、「モニター会にはどんな人に来てほしいのか(ペルソナ)」を具体的に想定して、なるべくその条件が揃った方に来ていただきます。そのためのアンケートづくりです。
2つ目は「参加者に聞くアンケート」。これはモニター調査としてのアンケートです。
通常、リサーチ会社の出身者でもない限りこんなアンケートの制作に慣れているはずはありません。中小企業診断士のサポートを受けながらやっとアンケートを作ることができました。
ただし、中小企業診断士さんはあくまでアドバイスだけをしてくれる方です。実際に文章を考えるのは実施者の仕事になります。今回は私が胃をキリキリさせながら、2つのアンケートの質問文を一生懸命考えました。
今回はやりませんでしたが、ChatGPTにアンケートのたたき台を作ってもらうのもありかもしれませんね。
モニター会当日
やっとこの日が来ました。直前の一週間で2回リハーサルをおこない、当日のパフォーマンスが最大限発揮できるようにしました。チームメンバーは全員リハーサルに参加してもらい、当日の流れをすべて再現しました。
当日の流れはこのようなものです。
時間は120分間、午前と午後の2回実施しました。
当日のスケジュール
- 当日のスケジュール(120分)
- あいさつ(5分程度)
- モニターの意図
- 本日の流れ
- 商品コンセプトの説明
- 英会話レッスン(50分)
- アンケート回答(10分)
- ディスカッション(60分)
- あいさつ(5分程度)
当日は、司会進行を私が務め、教室の先生たちはサービス提供(教室にておこなっているレッスンの実演)だけに集中してもらいました。
レッスン体験の後は、ディスカッションの時間になります。ディスカッションの詳細は、次の章でお話します。
4.アンケートとディスカッションの設計
モニター会を実施する上で最も重要になるのは、「体験者からうまく話を引き出すこと」に尽きます。
もちろん、モニター会当日の商品のコンディションが前提です。
商品のコンディション(今回は英会話レッスン)は、現場で普段からお仕事をしてくださる先生たちに負うところが大きいですから、先生たちのプロ意識におまかせしました。
一方で、リーダーとして(あるいは経営者やマーケターとして)取り組む必要があるのは「質問を考えること」。
これは非常に大変でしたので、私がリーダーとして考えたことをここにまとめておきます。私はマーケターではありますが、リサーチ分野に挑戦するのは初めて。
「初心者はこう考えて取り組んだ」という一例だと思っていただけると幸いです。
4-1.参加者選定用アンケートの設計
参加者選定用アンケートとは、産創館のモニター会事業に登録している大阪市民のうち、どの方に参加してもらうかを選定するためのアンケートです。主催者は、このアンケートの回答結果に基づいて「この人には来てもらおう」「この人は、欠員が出たら来てもらおう」という判断を下します。
私たちは、事業を始めるときから保護者のペルソナを明確にしていたので、その要件に該当するか否かを質問しました。
たとえば
・子どもの年齢は?
・子どもの英会話教育に興味があるか?
・これまでの子どもの学習経験は?
このアンケートはあくまで「対象を絞る」という位置づけなので、そこまで難しく考える必要はないと思います。
参加者選定用アンケートは、産創館の担当者さんからモニター会に所属しているたくさんの大阪市民に向けて送付され、2週間程度で結果がわかります。
参加者選定用アンケートの結果がわかったら、続いて「事前アンケート」の設計にとりかかります。
4-2.事前アンケートの設計
事前アンケートとは、モニター会に参加する方だけがモニター会当日までに回答するアンケートです。商品を体験してもらう前に、モニターたちのこれまでの消費行動を深く知るための質問をたくさん考えます。
これがとても難しい……!助けてくれる人もいない中、手探りで取り組むしかありませんでした。
事前アンケートを設計するに当たっては、次の2つに気をつけることが重要だったなあと思います。
気をつけること1:まず仮説を立てる
とにかく、対象顧客のことを想像して、想像して、想像し尽くしてください。その上で、チームとしての仮説を複数立てておきましょう。
なぜなら、モニター会は「私達の想像と、実際の保護者との間にあるギャップを探る時間」だからです。
私達はサービス提供のプロであり、今回は「英語を話せるようになるための教育のプロ」です。一方で保護者たちはその知識がありませんから、あくまで消費者として思いつきで言いたい放題言ってくる可能性すらあります。
「消費者がそう言っているから」という理由だけで事業に関する重要な決断をするべきではありません。だから、消費者の声との間にある認識や知識、実行面における「ギャップ」を見つけていくために、主催者側は事業のプロとしての仮説を立てておくことが重要になるのです。
仮説を立てるのは、それほど難しいことではありません。
たとえば、「親も子供も勉強する英会話教室」というコンセプトで想定されるのは、「保護者には子供と勉強するための時間がない」ということです。ちょっと想像すればわかりますね。
それなら「なぜ時間が足りないのか」「時間が足りないという自覚はあるだろうか?」「親が時間を確保しなくても、英会話教室に丸投げすれば子どもは英会話を身につけると本当に思っているんだろうか?」といった疑問が浮かんでくると思います。
そんな疑問についても、仮説を立てていきます。チームメンバーと一緒に想像力を膨らませたり、実際に教室に通っている保護者たちの姿を振り返りながら、「いや、保護者は本当はそういう気持ちじゃないと思う」とか、社内でディスカッションをしていくわけです。
ときには正反対の仮説が立ってぶつかったりします。そんなときは「モニター会当日に保護者に聞いてみよう」と、前向きに話を進めていきます。
仮説はあくまで仮説で、議論をしている部屋の中で答えが出る類のものではありません。立場の上下を問わず、闊達に議論していろんな仮説を洗い出していくことが大事です。
気をつけること2:仮説を検証するための質問を考える
これがめちゃくちゃ難しいです。仮説なら思いつきでも作れますが、質問は思いつきではいけません。一度出した質問は変更がきかないからです。
質問を考える時に意識しておきたいのは、「ギャップを把握すると同時に、次の施策につなげることができる質問か」という点。
たとえば、「英語学習経験のある保護者は、子どもと一緒に英語を学ぶことの重要性を理解しているはず」という仮説があるのであれば、実際に「保護者の英語勉強経験を教えてください」「子どもの英語学習に積極的に関わるべきだと考えていますか?」といった質問ができるでしょう。
この質問の回答結果が仮説とおおよそ一致していれば、「ターゲットとなる顧客はこのあたりにいそうだ」と判断でき、広告や販促物に反映していく事が可能になります。
と、簡単にはいうものの、質問を考えることは本当に大変でした。締切の直前まで文言を細かく調整したり、チームメンバーとディスカッションを重ねるなど、相当神経を使うことになりました。
ちなみに、調査会社に依頼すれば、質問設計などは向こうで巻き取ってくれます。当然費用はその分高騰してしまうのですが……。
産創館の担当者さんに聞いたところ、われわれだけでなく、主催企業はだいたい皆さん、頭を抱えながら質問を考えていらっしゃるそうです。
なかなか大変ですね。
特に、最終稿を提出するまでに何度も何度も考える必要があるのは「次の施策につなげることができる質問か」というところです。
モニター会はある種学園祭前日みたいなテンションになりがちなのですが、モニター会終了後に「やっと終わった!よかったよかった」とそのまま居酒屋に直行して慰労会に突入するようなことはあってはいけません。大事な示唆を全部忘れてしまいます。
モニター会で参加者から出た発言を整理し、それを踏まえてサービスをどのように改善していくのか、という方向性まで見えるようにしなければいけません。
質問を考えるときはいつも「これを聞いたら何がわかるのか?」「結果を踏まえて何を改善したいのか?」という観点で、質問文を点検するとすごくいいかなあと思います。
4-3.ディスカッションの設計
ディスカッションの設計は、もはや「勘だけを頼りに進める」と言っていいほど手探りでした。
というのも、ディスカッションの方向性を事前に想定しきることは不可能だからです。どんな参加者が、どんな考えを持っていて、どういう方向に話が進んでいくのかを事前に予想することはできません。ほぼアドリブです。
アドリブとはいえ、私たちが話を誘導すべき方向は存在します。それは「発言者を深掘りすること」。発言の背後にあるその人の考え方やライフスタイル、立場、経験、感情など、様々な要因を引き出すための質問を、その場で繰り広げる必要があります。
インタビューの方法論については、マーケティングリサーチだけでなく、取材記事の書き方など様々な種類の参考資料がありました。が、いろんな書籍を読んで混乱するのを避けるために、私は2つの書籍の関連箇所だけを参考にしました。
書籍1『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術 』(PHP研究所)
この本は、電通でヒット商品を作るためにマーケティング・リサーチをしている方がご自身のノウハウをまとめた本です。レンガのように分厚く、非常に網羅的に書かれている良書です。
この本を頭から読んでいくと、まあ数ヶ月はかかってしまいますから、私は必要に応じて辞書のように調べながら使いました。
特に学びが多かったのは「インタビューを成功させるための、「質問力」を上げる6つのコツ」という項目(Kindle版のためページ数を提示できず、申し訳ありません…)。この6つはメモ書きを作って当日机の上に置いておき、ディスカッション中の精神安定剤として活用しました。
コツ①「なぜ」「具体的に」「詳しく」を使って掘り下げる
コツ②一般論を言わせない、その人の「事実」のみにフォーカスする(時系列に注意)
コツ③1つの質問で聞きたいことは、1つに絞る
コツ④明確に定義されていてわかりやすい言葉で質問をする
コツ⑤誘導的なフレーズを省く
コツ⑥「もし〇〇が実現できるなら?」をぶつける
『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術 』(PHP研究所)
書籍2『マーケティングインタビュー100の法則 定性調査のテクニックを掴み、消費者理解の解像度を上げる』(日本能率協会マネジメントセンター)
この本は、マーケティングインタビューの仕事をコンパクトにまとめてくれています。モニター会を開催するにあたって必要な基礎知識は網羅しているので、一読しておくといいかもしれません。
この本は、ペンを片手にメモを書き込みながら読み進めていきました。様々なインタビューの状況の事例が描かれているので、「私たちのモニター会では、こんな対策をしておこう」といったことを考えながら読むことができます。
今手元にこの本がなくて、詳細をお伝えできないのがとても残念です。いつか追記します……!(2023年7月)
5.モニター会のあとにやるべきこと
モニター会の後にやるべきことは大きく分けると2つあります。
一つは、発言録をまとめること。これは普段の仕事に支障をきたすほど面倒くさい仕事なのですが、とても大事なのでしっかりやりましょう。
もう一つは、商品コンセプトとパフォーマンス(機能)の改善です。「商品コンセプトは受けているが、機能面に問題がある」あるいは逆に「商品コンセプト自体がはまらないが、機能面では評価されている」。商品を消費者に買ってもらうためには、コンセプトと機能のどちらをより注力して改善するべきか、モニター会でおおよそ検討がつくと思います。
私たちの場合は、商品コンセプトが消費者にはかなり好意的に受け入れられたものの、その機能があまりライフスタイルに合致しないという課題が見つかってきました。保護者の生活習慣の中に一つのサービスを組み込むために必要なことについても、モニター会で詳しく聞き出すことができました。
(おまけ)発言録をなるべく無料でラクしてまとめる方法
ディスカッションの内容は、許可をもらって録音することが可能です。産創館の担当者さんに相談してみてください。
ただ、ボイスレコーダーの文字起こしは想像を絶するほど面倒くさかったです。というのも、音声の文字起こしをしてくれる便利なサービスはたいてい有料なのです……。
そこで、「Word Online」をつかってWordファイルのなかに音声データを取り込み、自動文字起こし機能を作ってドラフトを作成させました。ただ、体感値では6割ぐらいおかしな文章になっているので、音声を聞きながら変な箇所を修正していく必要があります。
やり方はこのページを見てください(Microsoft公式)
Wordをつかってある程度まともな文章になったら、今度はその文章をChatGPTに投げ込み、句読点などを読みやすく調整してもらいます。「あー」とか「えー」とか、変なところにある「。」などを修正してもらうのです。
そこまでやって、ようやくまともに読める文章に仕上がります。
さらに、多くのチームメンバーと内容を共有する必要がある場合は、ChatGPTに要約を書かせればOKです。GPT4で試してみたところ、人間の解釈と遜色ない結果になりました。
6.モニター会で学んだこと
もし今度、再びモニター会を主催するなら、私としてはこんなところを注意するかな……という点を3点まとめました。
1.全体を統括する担当者を一人据えること
モニター会はほとんど全員にとって未知なる経験です。社長がモニター会の先頭に立つと、通常業務がおろそかになるほどの支障をきたすことさえあります。ですので、信頼できるメンバー1人に全体を統括してもらい、社長は報告を受ける形を取ったほうがよいかなと思います。任せる度量が大事です。
2.「ひとの話を聞くのがすき」という人に司会を任せること
ディスカッションは、まったく想定通りに進みません。本当です。だから逆に、「何でもいいからどんどん発言して」と促していける、コミュ力の高い人を司会に起用するのがいいかなと思います。
今回私は自分でやってみましたが、本当に後半は記憶がないぐらいでした。録音データを聞いてようやく思い出すといった感じです。人に話を振ったり聞いたりするのがナチュラルに上手な人を起用しましょう。
3.モニター会特命チームを作って、適宜打ち合わせながらすすめること
特命チームを作ることは必須です。準備しなければいけないこと、クオリティーを担保するためにすべきことなどが山程あり、社長一人では到底できない仕事になります。また、状況によっては私たちのように、3ヶ月ほどかかる長丁場になる可能性もあります。全体を統括する担当者のもとに特命チームを結成し、進捗を見守りながら進めていくことがとても大切です(かなり当たり前の話になっちゃいました)。
7.まとめ
産創館モニター会マジおすすめ。