「はたらく人の経済学」を伝える

株式会社明鏡堂は、経済学と経営学の知見を、日本人の暮らしと仕事、企業経営に役立つ英知として届けるために、動画講座や企業研修・コンサルティング等のサービスを開発しています。

ミクロ経済学とマクロ経済学

経済学は、資源の効率的な配分を実現するためにどうすればよいのかを問う学問です。
ミクロ経済学という分野では、売り手と買い手が市場で「合理的に行動する」ことが、最適な配分を実現する一番優れた手段だと考えられています。
買い手は「より安い価格でたくさんほしい」。売り手は「より高い価格でたくさん販売したい」。
二つの思いが交錯するところに均衡点が現れ、金額と生産数量が自動的に確定するという「需給の法則」です。
市場の中に企業が増えて供給量が増えるほど、金額はどんどん下がります。
すると、より安い価格で商品を提供できる企業(=生産性の高い企業)だけが生き残り、そのほかの企業は撤退。
消費者は、可能な限り最も安い価格でたくさん購入できるようになり、資源配分が最適化されます。
つまり、ミクロ経済学は、長い時間をかけて、より多くの消費者に、より多くの商品を届けるための経済学なのです。

たとえば、昭和初期まで腕時計は高級品であり、軍人以外には手の届かない代物でした。
しかしカシオやセイコーといった企業が腕時計の普及を目指し、安価で大量に生産する手法を確立しました。
今や腕時計はたたき売りのような価格で販売されていて、小学生でも着用するほど一般的な商品になりました。
両社が成功した大きな要因の一つは、ミクロ経済学への深い理解があったことだと言えるでしょう。

ミクロ経済学には一方で、資源配分の最適化にとても多くの時間がかかるという欠陥もあります。
特に、不況・恐慌のような事態には、ミクロ経済学には大きな欠点があります。
失業の発生です。

1929年の世界恐慌では、各国がミクロ経済学の理論に基づいて緊縮財政やブロック経済圏などの誤った政策を打ち出してしまいました。
労働市場は放っておけば回復すると安易に考えた結果、地球は失業者であふれかえり、世界は戦争へと突き進んでいきました。

そのころ、イギリスの経済学者・ケインズは、当時のミクロ経済学の理論が短期的な失業対策に役に立たないことを見抜いていました。
「雇用、利子および貨幣の一般理論」という著作で新たな理論を打ち立てました。
経済における政府の役割を重視し、家計、企業に対して大規模に資金を供給することで完全雇用を実現する「マクロ経済学」の誕生です。
ケインズの提言はアメリカのルーズベルト大統領に受け入れられ、「ニューディール政策」として実行に移されました。

マクロ経済学の政策はその後、多くの国に住む市民たちに仕事を与える理論として威力を発揮していたのですが……深刻な財政赤字を生み出す原因にもなってしまいました。
1940年代から60年代にかけて絶頂を迎えたアメリカ経済は、1970年以降に失速。スタグフレーションに見舞われます。
1980年代以降のアメリカは、ケインズの提唱した「大きな政府」から、かつてのような「小さな政府」へ舵を切り、
経済は大きな転換点を迎えました。

その後の経済成長は、GAFAのような民間企業によるイノベーションによって実現したとまとめることができるでしょう。

アベノミクス後の日本経済

日本では、バブル崩壊後のデフレーションとリーマンショック後の景気低迷を打破するために、アベノミクスと呼ばれる経済政策が実行されました。
アベノミクスの3本の矢は「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」。
財政出動と金融緩和はケインズが提唱した不景気対策とほとんど一致し、安倍政権下ではほとんど完全雇用を実現することができました。
2024年現在は物価上昇率も3%に達し、ようやく日本の長いデフレーションが終焉を迎えた様相を呈しています。
政府の権限でできることはほとんどやりつくしたと考えられます。

最後に残っているのは「成長戦略」。
多くの経済学者が同意している「法則」があります。

「生産性がすべてというわけではないが、長期的にはほとんどすべてである」――ポール・クルーグマン(2008年ノーベル経済学賞)


人類の生活水準は、生産性にほぼ完全に依存しているという意味です。

生産性向上の主役は、当然、世の中に商品やサービスを提供する企業であり、その責任者たる経営者たちです。
バトンは政府から企業へと移りました。

日本経済は再び、売り手と買い手が「合理的に行動する」市場へと帰ってきました。
すると、企業間の競争はますます激しさを増していきます。
特に日本では人口減少がすすみ、買い手が減る中でいかに供給量を調整するかという難問に直面します。
「業界の中に企業の数が多すぎる」という問題は、容赦なく企業の経営に打撃を与えることでしょう。
生産性の高い企業が生き残り、低い企業は市場を追い出される。
それが経済学者たちの知っている「経済の未来」です。

再びミクロ経済学の季節が来ました。
多くの企業が競争に敗れ、市場の撤退を余儀なくされることは想像に難くありません。
生産性向上のために思い切った決断と行動が、いま企業に求められています。

私たちが伝える「はたらく人の経済学」

多くの大学では、経済学を一つの体系として教え、その先端を切り開く人材の育成に焦点が当たっています。
一方で、経済学の知見を、人類の英知として広く活用するためには、経済学の知見を持ち、実際に活用できる企業家の存在が不可欠です。
彼らは、生産性の高い企業を経営する人であり、豊かな暮らしを営むことができる人です。
生産活動を単なる資本家と労働者の対立構造ではなく、生産性向上のための協力構造と考えることができる人です。

日本人の暮らしに依拠し、働くことが楽しくなるような、様々な知恵が経済学にはたくさんあります。
私はそれらを「はたらく人の経済学」と呼んでいます。

株式会社明鏡堂は、企業研修や動画講座、コンサルティングなどのサービスを通じ、「はたらく人の経済学」を伝えることで、
この国に住むすべての人が、再び豊かな暮らしの喜びを享受できることを願っています。

2024年3月27日記す

会社名株式会社明鏡堂
英文社名Meikyodo Inc.
代表取締役銘苅拓也
拠点大阪市
沖縄県浦添市

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