小さな会社は、弱者の戦略で勝てる土俵を見極める

こんにちは。小さな会社のマーケター・メルコです。
現在私は、2社のマーケティングをご支援させていただきながら、自分自身も法人設立に向けて動き出している
しがない個人事業主です。
このブログでは、小さな会社のスタートアップに必要な考え方を共有していきたいと思っています。

小さな会社が勝つための、弱者の戦略

世の中のあらゆるビジネスは、【資本のゲーム】です。
大きな資本を持っている人が生き残るような仕組みになっています。
これは紛れもない事実です。

私はかつて在籍していたコンサルティング会社で、中小企業の経営をサポートする仕事をしていました。
クライアントのライバルは、同じ商圏のなかにいる同業他社たち。言い換えれば「競合企業」です。

私たちの支援先は売上数億円規模の小さな会社でした。しかし同業他社は、年商10億円を大きく超えるような会社ばかり。
売上を何倍ももっている相手は、当然何倍も大きな資本を手にしています。
かれらと真正面から戦ったところで、価格競争に引きずり込まれておしまいです。

どうすれば大きな会社に勝つことができるか? 当時はそんなことばかり考えていました。

そして、ようやく一つの答えにたどり着きました。それが【ランチェスター戦略】です。
【ランチェスター戦略】こそ、弱者が強者に潰されないためのたった1つの実用的な戦略なのです。

ランチェスター戦略とはなにか?

ランチェスター戦略とは、私なりの理解で言えば【弱者が自分の勝てる土俵で相撲を取る方法】です。

逆に言えば、【強者の土俵で相撲を取らないための方法】です。

どういうことか?

中小企業は往々にして、「自分たちより強い相手の真似事をする」という作戦をとりたがります。
業界のトップ企業が展開している広告を真似したり、販促グッズを真似したり、同じ機材を導入したりなどなど。

この記事をお読みになっている皆様の会社でも、心当たりのあることがあるのではないでしょうか?

はっきり言って、その作戦は必ず失敗します。これは断言できます。
なぜなら、中小企業が自ら大手企業を追いかけていって同じ土俵に上がった場合、最終的にはたくさんの資本を持っている大手企業が中小企業を圧倒してしまうからです。

相撲でたとえるならば、弱小力士が横綱を模倣して同じふんどしを締めたり、同じ練習メニューをこなしたりしたところで、経験豊富で総合的な力を身につけている横綱には到底かなわないということです。

たとえ中小企業が頑張って大手企業を真似したCMを1本作って、週に1回放送したとしても、
大手企業はさらにクオリティの高いCMを5本も6本も作って、毎日何回も放送します。

そう。なんの戦略も持たず、ただ単純に大手企業のマネごとをしている企業は、大手からすればカネに物を言わせて簡単に屈服させられる相手なのです。

それならどうすれば大手企業に勝てるのでしょうか。
それは【一点突破】という言葉に集約されます。

大手企業は総合力で勝ります。それなら、弱者は非常に限られた特徴を磨き込むことで、「その一点に関しては大手企業に負けない」強みを作り込むことで勝てば良いのです。

【一点突破】。小さな会社の経営者は、この言葉を決して忘れてはいけないですし、困難に直面したときは必ず立ち返る「原点」とすべきです。

ランチェスター戦略とは、中小企業が【一点突破】を具体的に実行するにあたって、重大な示唆を与えてくれる戦略概論のようなものです。

小さな会社の経営者は、絶対に『確率戦』に挑んではいけない

ここに二つのドライヤーがあります。

一つは大手企業のもの。もう一つは東大阪にある、無名の小さな町工場が作っているものだとしましょう。
皆さんならどちらのドライヤーを購入したいと思いますか?

大手企業のドライヤーは、デザイン性にも優れていて、有名な女優が髪の毛をなびかせるCMを放送。
よくわからない科学的な効果があって、髪の毛にうるおいを与えてくれるそうです。

一方、小さな町工場のドライヤーは一昔古いデザイン。CMなんて放送していません。
髪の毛にうるおいを与える機能もついていません。

さて、どちらを選びますか?
当然、多くの方が「大手企業」の製品を選ぶこととなります。

これが「確率戦」です。

きっと一部の人間は、東大阪の町工場を応援するために、海の物とも山の物ともつかぬドライヤーを買う人はいるでしょう。

しかし大半の人は、知名度やテレビCMで表現された効能を期待して大手企業の製品を購入してしまいます。

中小企業のドライヤーも大手企業のドライヤーも、どちらを買ったところで「髪の毛が乾く」という結果にはなんの違いもないにも関わらず、人は大手を選んでしまうのです。

中小企業は、このような戦い方を避けなければいけません。

それなら町工場はどんなドライヤーを作るべきだったのか?

例えば、様々な角度から髪の毛を乾かすヘアメイクアップアーティストのために、特殊な形状のドライヤーとか。
日本で売られているドライヤーの中で最も強い風力を売りにするとか。

とにかく、消費者が「おお!」と思うような差別化要素を盛り込み、その一点においては絶対に大手企業に負けないようにする。

それが『確率戦』を避けるための有効な方法になるのです。

安さで対抗してはいけない

もう一つ中小企業でありがちなのが「安さで対抗する」ということ。

これはもう、絶対にやめましょう。会社が潰れてみんなが不幸になります。

ユニクロやニトリを見てください。彼らが安く商品を提供できる理由は何でしょうか?

答えは「製造から販売まで全部自社で完結している」。いいかえると「資本がある」。

そう、「安さ」で勝利している企業は、どんな場合でも資本力で勝利しています。

例えば「早い」でおなじみ吉野家。吉野家と同じメニューで、吉野家より安い牛丼をあなたは作ることができますか?

おそらく不可能だと思います。なぜなら、吉野家は全国に商品を出荷することを前提とした大量仕入れによってコストを下げていますから、
小さなスーパー個人向けに販売されている食材をどれだけリーズナブルに加工したところで、吉野家の牛丼の安さには勝つことができないのです。

「安さ」は資本のゲームです。

私のめざすビジネスの姿=「時間を味方につける」

私はしがない個人事業主として、今は日々なんとか食っていける量だけの売上を立てて暮らしている状態です。

お金という意味では、企業のために貯めた100万円がありますが、せいぜい100万円。
こんな金額は、あっという間に消えてなくなります。

それ以外の資本といえば、WEB周りのスキルや経験、販促の経験など、代行業務のスキル。

あとは「時間」です。

「時間」とは素晴らしい資源です。お金やスキルとは異なり、全人類に等しく配分されているものです。
だから私は弱者として「時間を味方につける」ビジネスに取り組みたいと考えています。

「時間を味方につける」とは「時間にレバレッジをかける」というスタートアップの発想と正反対の考え方です。
むしろ、ウォーレン・バフェットの長期投資のような考え方でしょう。

学生時代、京都に住んでいた頃に哲学者鷲田清一さんの著書『京都の平熱』を読んでいました。

その中で鷲田さんが「京都の商売には、『儲けすぎてはいけない』という考えがある」という旨の記述を目にしました。

当時経済学部で「いかに生産性を上げて経済成長するか」という議論に取り憑かれていた私には衝撃的でしたし、「そんなの古い時代の綺麗事だ」と思いました。

が、今こうして小さなビジネスをするようになってようやく「儲けすぎてはいけない」という考えの意味がわかってきた気がします。

小さな会社が儲けすぎようとする時、無理に大きな会社のマネをしてしまったり、必要以上の借り入れを行って大変な目にあったり……

翌々考えてみると、そんな無謀なリスクを取る必要はないのです。「儲けすぎよう」とするから破滅的な未来を迎える。
京都の街並みを見ているとわかります。千年以上に渡って、人々が暮らし続けることにこそ価値があるのだと……。

諸行無常、盛者必衰。京都を支配する人たちは目まぐるしく入れ替わったけれども、いつでも京都には京都を愛する人達が住み続けています。

そう考えると、『企業の目的』とは一般的に言われているような、「より早く、よりたくさん」の儲けを生む「利益の追求」ではないのかもしれません。
特に私たちのような小さな会社にとっては、そんなことよりも「来年、再来年も生き残り続けること」。

無論、より早く大金を手にしたいという強欲な気持ちも私の胸の奥底には横たわっています。ビジネスマンですから。

でも、あくまで私の理想は「時間を味方につける」。

短期間で濡れ手に粟の大金を手にするようなビジネスではなく、長い時間をかけて愛され続ける京都の街のような経営ができたら良いなと思います。

あれ、一体何の話だっけ。