飲食店メニュー表づくりのポイント
飲食店におけるメニュー表は、単なる商品リストではありません。商品の一覧をきれいなデザインで制作するだけでは不十分です。
お客様は、多種多様な商品の中から、今の自分に一番ピッタリの商品を直感的に選んでいます。メニュー表を「単なる一覧表」にしてしまうことは、お客様にとって利便性が低いだけでなく、店舗側が「本当に選んでほしい商品」を効果的に販売できないという問題を引き起こします。
そのため、メニュー表作りは戦略的に行う必要があります。
本記事を読むことで、以下の重要なポイントを習得できます。
記事で習得できること
- メニュー表作りの主要なポイントと要点
- 商品ごとの取り扱いの大小(強弱)の付け方
この記事の要約
・メニュー表の役割とは、お客様に短時間で高単価の商品を選んでもらうことです
・メニュー表づくりでは、ニーズが大きく、利益額も大きい商品から優先的に目立たせることが重要です
・利益額の小さな商品は、見せ方に工夫をするか、廃止にすることを検討すべきです
メニュー表の役割
飲食店におけるメニュー表は、単なる商品リストではなく、「凄腕の営業マン」としての役割を担う重要な営業ツールです。
その本質的な役割は、次の2点に集約されます。
- 短時間でお客様に意思決定をさせること
- お客様に納得感を与えつつ、より高い単価の商品を選んでもらうこと
腕のいい営業マンが迅速に商品の魅力を伝え、お客様に高単価な商品を購入してもらうのと同じです。メニュー表もこの役割を果たすことで、売上に貢献します。
魅力的なメニュー表作りのポイント
繁盛店が実践しているように、メニュー表を作成する上で特に重要なポイントは以下の通りです。
- ビジュアル表現の活用(イラスト・写真)
- 文字だけのメニュー表は、お客様への情報伝達が遅れ、短時間での意思決定を妨げます。写真やイラストを活用し、商品の魅力を瞬時に、直感的に伝えることが重要です。
- 短時間での意思決定を促す構成
- お客様の意思決定に時間がかかると、「あの店は時間がかかる」という理由で再来店を避ける原因になりかねません。迷わせないシンプルな構成で、ストレスなく注文できるようにすることが不可欠です。
メニュー表がもたらす具体的効果
メニュー表を工夫して作成することは、中小企業にとっても以下の点で大きなメリットをもたらします。
- 注文プロセスの効率化(短時間での意思決定)
- 客単価の向上(お客様が自ら高単価な商品を選ぶ誘導)
お客様に無理やり高いものを買わせるのではなく、メニュー表の工夫を通じて商品の価値をしっかりと伝え、お客様が「この金額でも納得できる」と感じて自ら選んでくれる状態を作り出すことが大切です。
例えば、相場が1,000円の商品でも、提供する体験や価値を適切に伝えることで1,500円で販売し、お客様に満足してリピートしてもらうサイクルを生み出すことができます。
このように、お客様が「高いか安いか」という単純な比較ではなく、価値に基づいて高い方を選ぶよう誘導できるメニュー表は、飲食店経営において非常に強力な武器となります。
情報伝達のポイント
メニュー表作成においては、お客様への情報伝達の工夫が不可欠です。
お客様がメニュー表を見て注文するまでの短い時間(数秒から長くても1、2分)で、いかに多くの情報を効果的に伝えられるかが、極めて重要な要素となります。
効果的な情報伝達を実現するためのメニュー表作成のポイントは、以下の3点です。
- 文字よりも絵(写真・イラスト)
- 小よりも大
- モノクロよりもカラー
これらの3つのポイントを意識することで、お客様に伝わりやすいメニュー表となります。
文字よりも絵(写真・イラスト)
消費者の情報処理における重要なポイントの一つは、「文字よりも絵を優先する」ことです。
【脳の特性と情報処理の順番】
人間の脳は、文字情報よりも絵や写真といった視覚情報を優先的に処理する傾向があります。これは、情報処理が以下の順序で行われるためです。
- ビジュアル(絵や写真)の認識:まず、視覚情報が脳に取り込まれます。
- 記号(文字)の処理:次に、そのビジュアルの中に含まれる文字や記号を理解しようとします。
つまり、情報処理は「ビジュアルが先、記号が後」なのです。
【メニュー表への応用】
この特性をメニュー表に活かすと、以下の点が重要になります。
- 視線の固定:大きなイラストやインパクトのある写真が掲載されていれば、お客様の視線はまずそこに引き付けられます。
- 直感的な選択:お客様はまず絵の情報を抜き出し、直感的に「どの料理にしようか」と判断します。皆様も経験があるように、飲食店で絵を見て料理を選ぶ行動は、この脳の特性に基づいています。
- 「存在しない」と見なされるリスク:「絵で見つけることができないもの」は、お客様の脳内では存在しないものとして認識されてしまう可能性があります。
したがって、メニュー表は文字情報以上に絵を重視し、ビジュアルをベースに作成することが非常に効果的です。
小よりも大
メニュー表作成における「小より大」の原則
メニュー表において、お客様の視線を集め、戦略的に商品を販売するために重要なのが情報の「面積」、つまり「小より大」という考え方です。
この原則が重要な理由
- 人間は、メニュー表に載っている情報を見たとき、面積の大きい情報を優先的に処理し、注目する傾向があります。
- 例えば、大きな写真と小さな写真が並んでいれば、自然と大きな写真の方に目が引きつけられます。
- 事例比較:
- 大きなページを使って紹介されている「期間限定メニュー」
- 小さな写真をたくさん載せている「レギュラーメニュー」
→この場合、情報の面積が大きな1が、お客様に先に認識されます。
メニュー表作成で意識すべきルール
自分たちが何を売りたいかという戦略に基づき、情報のサイズを使い分けることが極めて重要です。
| 目的 | 表示方法 | 例 |
| 売りたいもの、お客様に見つけてもらいやすくしたいもの | なるべく大きく表示し、写真やイラストを効果的に使用する。 | 看板メニュー、高利益率メニュー |
| あまり売りたくないもの、利益率が低いもの | 小さく表示するか、写真なしの文字だけで掲載する。 | 単品、一般的なサイドメニュー |
モノクロよりもカラー
最後のポイントは、モノクロ一辺倒ではなく「カラーを効果的に活用する」ことです。
飲食店のメニュー表は通常カラーで印刷されますが、ここで重要なのは、単に文字の色を変えるのではなく、「カラーは情報を扱いやすくする」という特性を利用することです。
例えば、店の看板メニューなど、特に強くアピールしたい商品がある場合、大きな写真と共に以下の工夫を取り入れると効果的です。
カラーを活用した訴求力の高め方
- 文字の背景色に目を引く特別な色を使用する
- 注釈(アノテーション)を工夫する
- おすすめのトッピングや食べ方の説明など、注釈のために他の要素とは異なる専用の色を使用する。
- あるいは、注釈の部分を枠線で囲み、その内側に色を付ける。
このように、他の情報よりも目立たせたい内容に意図的に色を使うことで、メニュー表の訴求力を高めることができます。
商品の優先順位の付け方(マトリックス)
前の段落では、お客様に効率よく情報を伝え、短い時間で意思決定を促すという、人間の情報処理の側面について説明しました。
次に重要となるのは、「どのような情報を伝えるか」という点です。
お客様が効率よく商品を選べるとしても、それが店舗の利益に繋がらなければ意味がありません。したがって、お客様の視点だけでなく、「自分たちが売りたい商品(利益貢献度の高い商品)」の優先順位付けが必要となります。
具体的には、以下の優先順位を決定します。
- どの商品を、どのくらいのサイズで、大きく取り扱うか
- どの商品を目立たせないようにするか
ここでは、店舗側の視点として、「情報の優先順位」のつけ方について説明します。商品の優先順位を決める際には、以下の4つの領域(マトリックス)に分けて分析することが有効です。

このように商品を4つの領域に分類することで、販売戦略上の優先順位を明確にすることができます。
マトリックスの詳細について見る前に、まずは優先順位の原則を抑えておきましょう。
原則1.ニーズが大きいものが優先
メニュー表を作成する際の最も重要な考え方は、「お客様からのニーズが大きい商品」を最優先で扱うことです。お客様に選ばれやすく、最も注文が多い商品を大きく目立たせて掲載する必要があります。
先述したように、メニュー表の役割はまず「お客様に短時間で意思決定させること」。そのため、多くのお客様が注文する傾向のある商品をメニューの一番目立つ場所に配置することが原則です。
【優先すべき看板メニューの具体例】
- 店のコンセプトを体現する看板メニュー:
- ラーメン屋であれば、店の名前を冠した「特製醤油ラーメン」など、店の代名詞となる一品。背脂醤油ラーメンがメインなら、それを前面に出します。
- 焼き鳥屋であれば、「特製焼き鳥」など、店名や特徴を冠したメニュー。
- 業態を代表する主力商品:
- 牛丼屋であれば、「牛丼」や「ネギ玉牛丼」などの主力商品。
- 唐揚げ屋であれば、「唐揚げ」。
- うどん屋なら「うどん」、ハンバーガー店なら「ハンバーガー」。
店が「看板」として掲げている料理があるはずですので、まずはそれを最初に提示することがおすすめです。
【メニュー構成の重要ポイント】
- ニーズの大きな商品を最優先する:
- 最も販売数量が多い商品、つまりお客様が選びやすい商品を優先的に大きく表示します。ニーズの小さい商品の訴求は控えめにすべきです。
- お客様の来店動機に合わせる:
- お客様がお店を訪れる最大の動機となっている主力商品を最優先で提示します。特定のメニューを求めて来店したお客様に、別の商品を強く提案することは体験として好ましくありません。
自分たちが代表として販売している商品、お客様からの注文が最も多い商品、あるいは注文が期待される「ニーズの大きいもの」を、メニュー表の目立つ位置に大きく掲載することを意識しましょう。
原則2.利益額の大きいものが優先
次に考慮すべきは「利益額」です。
利益額の大きいメニューは、優先的に目立つように掲載し、逆に少ないものは表示を小さくするなど、工夫が必要です。
利益額の大きいメニューの例
特に「店の看板メニューのセット」は、最も利益額が大きくなる傾向があります。その主な理由は以下の2点です。
- 販売数が最も多い: 多くの客に選ばれるため。
- 原価の調整がしやすい: 看板メニューとして確立しているため。
具体例: ラーメンとチャーハンのセット、ハンバーガー・ポテト・ドリンクのセットなど。
これらのセットメニューは高い利益額が見込めるため、メニュー表の目立つ場所に大きく掲載すべきです。
原則: 人気があり、かつ利益額の大きいメニューを最優先で配置しましょう。
原則3.ニーズが大きいのに利益額の小さい商品は、工夫が必要
利益額が小さい商品への対応は、その商品がお客様のニーズを多く集めている場合に特に重要になります。この場合、単に多く売れても店の利益に大きく貢献しないため、「単価を上げる工夫」が不可欠です。
具体的には、以下の戦略が考えられます。
- セット販売の導入: 他の商品と組み合わせることで、客単価の向上を図ります。
- ブランディングによる価値向上: 「ここでしか味わえない特別な商品」としてメニュー表内で訴求し、お客様に高い価値を感じてもらうことで、値上げを可能にします。
- 単純な価格改定(値上げ): 利益が少ない原因が単純な安さにある場合、一度価格を上げてお客様の反応を検証し、そのまま定着させるという選択肢もあります。
このように、ニーズが高いが利益額が小さい商品は、店舗全体でアイデアを出し合い、より高い価格で販売するための努力が求められます。これは、メニュー表作成と並行して進めるべき重要な作業です。
単価向上への取り組みを怠ると、「赤字なのに売り続ける」という状況に陥り、店全体の経営を圧迫しかねません。このため、店長やスタッフだけでなく、社長やオーナーといった経営層を交え、全員で議論し、対策を講じることが最善です。
原則4.ニーズが小さく、利益額も小さい商品は廃止せよ
最後に、ニーズが小さく、利益も少ない商品について検討します。
このような商品は、お客様の需要が低く、かつ利益も上がらないため、すぐにでもメニューから廃止すべきです。どれだけ販売努力をしても売れないという結果はすでに出ており、店にとっての貢献度が極めて低い状態です。
【例外的な検討の余地】
稀に、提案の仕方を変えることで売上が伸びる可能性もゼロではありません。もし、工夫次第で利益を上げられる見込みがあるならば努力する価値はありますが、経験上、多くの場合、そのような工夫の余地もなく、売上全体に占める割合も数パーセント程度に留まります。
メニューに残すことのデメリット
このような商品をいつまでもメニュー表に載せ続けることは、以下の明確なデメリットを生じさせます。
- 仕入れ・管理の負担増
- その商品のための仕入れ業務が発生する。
- 仕入れ管理がおろそかになるリスクがある。
- 在庫の回転が悪くなり、管理コストが増加する。
- 機会損失の発生
- 本来売れるはずの新商品をメニューに追加できなくなる。
- メニュー表の限られたスペースを占有し、もっと売れるポテンシャルを持つ主力商品などの訴求力が低下する。
不必要なものは削減し、メニューをスリム化することが重要です。ニーズが小さく利益額も小さい商品は、迷わず廃止することが賢明な判断と言えます。
4つの領域の分析
飲食店におけるメニュー表作成の要点を、利益とニーズの視点から以下のように整理します。

| 象限 | 商品カテゴリ | 特徴 | 対策 |
| 第一象限(A) | 看板メニュー | ニーズが大きく、利益額も大きい商品です。お店が最も売りたい商品です。 | 写真や絵を大きく使い、メニュー表の中で一番大きな面積を使用します。 |
| 第二象限(B) | 高収益・低ニーズ商品 | ニーズは小さいものの、利益額が大きい商品です。 | 看板メニューよりも小さな扱いの非主力商品ですが、写真入りで目立つように作ります。 |
| (a) サイドメニュー | トッピング、デザート、ドリンクなど、単体注文は少ないが合わせ買いで利益を押し上げる商品群。 | ||
| (b) 補完メニュー | 看板メニュー以外で、店の魅力を補う高単価な商品。非主力商品ではあるが、お客様に複数の選択肢を与えるもの。 | ||
| 第三象限(C) | 低利益・低ニーズ商品 | ニーズも利益も小さい項目です。 | メニューからの廃止を検討します。 |
| 第四象限(D) | 低利益・高ニーズ商品 | ニーズは大きいのに利益額が小さい商品です。 | 単品の商品がここに含まれやすいです。この領域の商品が売れている場合は、メニューの表示方法に問題があるため、利益を大きくする工夫が必要です。 |
A:最優先で目立たせるべきメニュー

「ニーズが大きく、利益も大きい」メニューは、売上と利益の基盤となる「看板メニュー」です。メニュー表で最も大きく扱うべきです。
具体的な工夫:
- 写真を大きく掲載する。
- 文字も大きく目立たせる。
- メニューを開いた瞬間にすぐ目に飛び込んでくる配置にする。
B:次に大事にすべきメニュー

「利益額が大きく、ニーズが小さい」カテゴリーは、ニーズを無理に増やすことは困難です。これは、お客様の好みそのものが小さい割合を占めるため、意図的な意思決定の変更は難しいためです。
メニュー表での構成:
- 看板メニューの次に表示させます。
- トッピングやデザートなど、ニーズが小さくても利益が出る商品を配置します。
D: 利益確保の工夫が必要なメニュー

「ニーズが大きいが、利益額が少ない」メニューは、利益を確保するための工夫が必須です。特に単品メニューに多く見られますが、単純な値上げはお客様離れのリスクがあります。
利益を大きくするための方法:
- ストレートな値上げを実施する。
- 他のメニューと組み合わせて購入を促す「クロスセル」を推奨する。
- より高価な選択肢を提案する「アップセル」の仕組みを作る。
単品メニュー(利益が少ない)の情報伝達の工夫:
単品メニューが優先的に選ばれにくいよう、目立たないようにコントロールします。
- (a) 写真は載せず、文字だけで小さく表示する。
- (b) 表記を極めてシンプルにする。
C:廃止すべきメニュー

「ニーズが小さく、利益の単価も小さい」メニューは、お客様も求めておらず、店側も売りたくない商品であり、速やかに廃止すべきです。
判断基準(直感ではなく数字に基づき検討):
- 月に1個しか売れていない、または特定の月には全く売れていないなどのデータがある場合。
廃止すべき理由:
売れない商品は回転が少なく、在庫として残ることで以下のような経営リスクにつながります。
- 賞味期限切れに気づかない。
- 期限切れの商品を誤ってお客様に提供してしまう(お店の事故につながる)。
こうした事故を防ぐためにも、ニーズが小さく利益の少ない商品は経営の足を引っ張るため、原則として廃止の判断が正しいとされます。
(参考)期間限定メニューの取り扱い
期間限定メニューを導入する際の最大の目的は「利益の増加」です。
大手チェーンは期間限定メニューを集客の呼び水として利用することがありますが、期間限定メニューを集客施策として活用するには大規模な広告キャンペーンが必要です。
小さな飲食店においては、大規模な集客キャンペーンを展開する予算や合理性に欠ける場合が多いため、期間限定メニューの役割は「客単価と利益額の向上」に絞るべきです。店頭完結の施策と割り切る必要があります。
利益を増やすための期間限定メニュー設計では、以下の視点が重要になります。
期間限定メニューの目的と設計の重要ポイント
- 商品設計による利益額の向上(最重要)
- 前提: 通常メニューよりも利益が大きくなるような商品設計であること。
- 利益率: 看板メニューなど既存の商品よりも高い利益率を確保できる設計にすること。
- 結果: 一件あたりの利益の絶対額が大きくなるようにすること。
- 来客数の増加(小規模店では限定的)
- キャンペーンによって、その時期の来客数を増やせる可能性もありますが、小規模店では集客効果は限定的と考えるべきです。
期間限定メニュー作成の原則
集客を目的とするのではなく、利益額の向上を主眼とするため、以下のポイントを必ず守らなければなりません。
- 利益の額を下げてはいけない
- お客様がそのメニューを選ぶことで、確実に総利益が増える設計でなければなりません。
- 単価や利益額が下がるような期間限定メニューは、絶対に作ってはいけません。
- 利益率が高いものにする
- 通常メニューよりも高い利益率を設定すべきです。
- 利益額が大きいものにする
- 最終的な利益の絶対額が大きくなる商品構成にすることが必須です。
期間限定メニューを新しく追加するかどうかの判断は、「利益がこれまで以上に伸びる」という理由だけで下すべきです。利益を下げるリスクのあるメニューは、避けるべきです。
