この記事では、店舗を出すときに必ず押さえておきたい「良い立地の条件」を、
・十分な市場規模があること
・競合が少ないこと
という2つの大原則から解説します。

不動産会社から「この物件、御社にピッタリですよ!」と勧められて、

  • 場所も悪くなさそう
  • 家賃も何となく払えそう

そんな“直感”だけで決めてしまうケースは少なくありません。

うまく当たればラッキーですが、外れた場合のダメージは、店舗ビジネスでは致命的です。
立地の失敗は、ほぼ確実に「撤退」という形でツケが回ってきます。

だからこそ、社長・オーナー自身が、立地の良し悪しを数字で判断できることが重要です。
ここでは、そのための「考え方の軸」を整理します。

良い立地を「感覚」で選ぶと博打になる理由

不動産会社が必ずしも「あなたのビジネスモデル」を理解しているとは限りません。

  • 営業成績を優先して、とにかく契約してほしいだけかもしれない
  • 悪意はなくても、ビジネスの収支構造まではわかっていないかもしれない

いずれにしても、その物件で商売をするかどうかの最終決定者はオーナーであり、責任もオーナーが負うことになります。

だからこそ、

  • 「駅近だから良さそう」
  • 「前の店もそこそこ繁盛していたみたい」
  • 「不動産屋さんがイイと言っている」

といった感覚ではなく、原則と数字に基づいて「勝てる土俵」かどうかを判断する必要があります。

そのときの判断軸が、次の2つの大原則です。

良い立地の2大原則

原則1:十分な市場規模があること
原則2:競合の数が少ないこと

この2つを満たしていれば、細かい条件(角地かどうか、看板の見え方、歩行者導線など)は「後から調整するテーマ」です。

逆に言えば、この2つを満たしていない場所は、どれだけ工夫しても“負けがほぼ確定している立地”だと考えたほうが安全です。

原則1:十分な市場規模があること

まずは「そもそも、このエリアにお客さんのお財布がどれくらい存在するのか?」を数字で確認します。

市場規模とは何か?

ニュースなどで、次のような表現をよく目にします。

  • 「IT業界の市場規模は◯兆円」
  • 「自動車の新車市場は◯兆円」
  • 「ラーメン市場は◯千億円」

市場規模とは、同じ商品・サービスの売上を全国すべて合計した金額のことです。

ラーメンを例にすると:

  • A店:年商5,000万円
  • B店:年商3,000万円
  • C店:年商2,000万円
  • …日本中のラーメン店の売上をすべて足した合計金額

これが「ラーメン店の市場規模」です。

もちろん、現実には全店舗の売上を1軒ずつ聞いて回ることはできないので、

  • 平均的なラーメンの単価
  • 人々がどのくらいラーメンにお金を使っているか

などをもとに、調査機関や省庁、業界団体が推計しています。

ただし、ここで注意したいのは、全国市場の数字だけでは出店判断に使えないという点です。

店舗ビジネスで戦うのは、「日本全体」ではなく「自店の周辺エリア」だからです。

全国市場から「自分の店の周りの市場規模」に落とす

実際に知りたいのは、例えばこんな数字です。

  • 「この町で、ラーメンに使われているお金は年間いくらくらいか?」
  • 「この駅周辺で、美容院に使われているお金はどのくらいか?」

そのために、全国の市場規模から自分の商圏(=店の周りのエリア)の市場規模に落とし込む必要があります。

代表的な考え方は2つです。

① 一人当たりの消費額 × 人口で考える方法

ステップはシンプルです。

  1. その業種の「全国市場規模」を調べる
  2. 日本の人口で割って「一人当たりの年間消費額」を出す
  3. 商圏人口を掛け合わせて「自分のエリアの市場規模」を出す

たとえば、ラーメンの仮の例として:

  • 全国ラーメン市場:8,000億円
  • 日本の人口:1億人(わかりやすいように丸めます)

この場合、
一人当たりの年間ラーメン消費額は約8,000円というイメージになります。

この「8,000円」を使って計算すると……

  • 人口3万人の町 → 8,000円 × 3万人 = 年間2億4,000万円
  • 人口7万人の町 → 8,000円 × 7万人 = 年間5億6,000万円

これが「その町のラーメン市場規模」の目安です。

一方で、小さな島で人口300人しかいないとすると:

  • 8,000円 × 300人 = 年間240万円

ラーメン店1店舗でこの金額しか市場がないのであれば、
どう考えてもビジネスとして成り立たせるのは難しいことが、数字ではっきり見えてきます。

(筆者注)そういえば、人口の少ない離島や田舎にある飲食店では、ラーメンだけでなくちゃんぽんやカレーライスなど、複数のカテゴリにまたがって料理を提供することが多いですね。それも、ラーメン単体ではビジネスとして成立できないからと考えられます。

② GDP比で考える方法(地域の物価・所得差を反映)

もうひとつの現実的な方法が、GDP(国内総生産)の地域間の比率を使うやり方です。

  • 日本全体のGDPに対して、各都道府県や市区町村がどれくらいの割合を占めているかを調べ、市場規模にかけ合わせて計算します。
  • 地域別のGDPは、公的統計として公開されています

例えば:

  • 全国ラーメン市場:8,000億円
  • ある県のGDPが「日本全体の1%」だとすると
    → その県のラーメン需要は、8,000億円 × 1% = 約80億円

という具合に推計できます。

この方法の良いところは、地域ごとの物価・所得水準の違いをある程度反映できる点です。

  • 東京:家賃も人件費も高く、サービス価格も高くなりやすい
  • 地方(例:沖縄):所得水準が低く、同じ商品でも価格帯が抑えられがち

同じ「ラーメン1杯」でも、

  • 東京のビジネス街 → 1,500円
  • 地方都市 → 900〜1,000円

というように、地域によって単価が変わります。
GDP比を使うことで、こうした差を加味した現実的な市場規模に近づけることができます。

人口とGDP、両方を見ると「本当の姿」に近づく

実務的には、

  • 人口で按分した市場規模
  • GDPで按分した市場規模

この両方を計算して、その間のレンジに本当の市場規模があると考えるのがおすすめです。

こうして「このエリアには、だいたいこれくらいのお金が動いている」というイメージが掴めたら、
次に重要なのが、その市場を何店舗で分け合うことになるのかです。

原則2:競合の数が少ないこと(=分け前の計算)

市場規模がわかったら、次の問いはシンプルです。

「このお金を、何店舗で分け合うのか?」

これが、競合数の話です。

例:市場規模1億円のエリアに何店舗あるか?

仮に、あるエリアのラーメン市場規模が「年間1億円」だとしましょう。

パターンA:2店舗で分け合う場合

  • 自店1店舗+競合1店舗=合計2店舗
  • 1億円 ÷ 2店舗 = 1店舗あたり5,000万円(平均)

ラーメン店として、年商5,000万円はかなり健闘しているラインです。
この競合状況なら「戦いやすい土俵」と判断できます。

パターンB:10店舗で分け合う場合

  • 自店1店舗+競合9店舗=合計10店舗
  • 1億円 ÷ 10店舗 = 1店舗あたり1,000万円(平均)

ラーメン店で年商1,000万円しか見込めないとなると、

  • 家賃
  • 人件費
  • 光熱費
  • 原材料費

を支払って、オーナーの手元に残るお金はかなり厳しくなります。

この状態で新規参入するのは、ほぼ“負け試合”に飛び込むようなものです。

大事なのは「精神論」ではなく、客観的な数字

ここでのポイントは、計算に使っている材料がすべて客観的だということです。

  • 公開されている統計データ(市場規模・人口・GDPなど)
  • 実際に数えた競合店舗の数

つまり、「うちのラーメンはおいしいから、もっとやれるはず」といった精神論を完全に排除できます。

  • 市場にこれだけのお金がある
  • 競合がこれだけいる
  • ということは、平均すると売上はいくらくらいになる

この「分け前のイメージ」を出店前にシビアに計算しておくだけで、
立地の失敗確率は大きく下がります。

出店前に使える「2大原則チェックリスト」

最後に、この記事の内容を実務で使えるチェックリストにまとめます。

ステップ1:自分のビジネスの全国市場規模を調べる

  • 「◯◯ 市場規模 国内」「◯◯ 業界 市場規模」などで調査
  • 信頼できる調査機関・省庁・業界団体のデータを参考にする

ステップ2:一人当たり消費額 or GDP比で、商圏の市場規模を推計する

  • 一人当たり消費額 × 商圏人口
  • もしくは、GDP比 × 全国市場規模
  • 可能なら両方計算して「レンジ」で把握する

ステップ3:商圏内の競合店舗数を数える

  • Googleマップ
  • 地元のタウン誌
  • 実際の徒歩・車での確認

などを使い、「自分と同じ土俵にいる店」を漏れなくカウントします。

ステップ4:市場規模 ÷ 店舗数 で「平均売上の目安」を出す

  • 「市場規模 ÷ (自店+競合の店舗数)」=1店舗あたりの平均売上
  • その金額でビジネスモデルが回るかを、冷静に検討する

ステップ5:平均売上の目安から「勝てる土俵」かどうかを判断する

  • 平均的な数字で見ても、十分な売上が期待できるか?
  • 「頑張ればいける」ではなく、「平均でもいける」と言えるか?

ここまでやって初めて、「この立地は良い立地だ」と数字で言えるようになります。

まとめ:良い立地=「市場規模+競合数」で勝算のある土俵かどうか

  • 不動産会社の感覚や、自分の直感だけに頼った立地選びは「博打」になりやすい
  • 店舗オーナーは、自分で立地の良し悪しを判断できる「原則」と「数字の見方」を持つべき
  • 良い立地の2大原則は、①十分な市場規模がある ②競合が少ないの2つ
  • 全国市場規模から、人口とGDPを使って「自分の商圏の市場規模」を推計できる
  • 市場規模を競合店舗数で割ることで、「1店舗あたりの平均売上の目安」が見える
  • 精神論ではなく、客観的な数字で「勝てる土俵」かどうかを判断することが、出店成功の近道

良い立地とは、感覚的に「良さそうな場所」ではなく、
数字で見ても「平均的に戦って勝てる土俵」になっている場所のことです。

投稿者プロフィール

銘苅拓也(めかるたくや)
銘苅拓也(めかるたくや)出店戦略コンサルタント
船井総研出身の経営コンサルタント。前職では葬儀社を対象に「家族葬専用式場」の出店を全国で後押し。事業戦略の立案からプロモーションの実行まで一貫した支援で総額数十億円の売上に貢献した。 独立後は、「100年続く事業をつくる」を理念に掲げ、幅広いサービス業の売上・利益・生産性向上を支援する。戦略や計画のみならず、チラシ・WEB・テレビCMなどのプロモーション施策を網羅し、特性に合わせて提案できる全国的にも希少なコンサルタント。