
出店戦略において広告の果たす役割は、とても重要なものがあります。というのも、広告は認知拡大を急がせる効果があるためです。
この記事では、出店戦略における以下の5つのトピックについて解説しています:
この記事のトピック
- なぜ広告を使うのか
- 広告にはいくらのお金を使ったらいいのか
- どんな広告媒体を使うべきか
- 広告では何を伝えるのか
- 広告を使って成し遂げる最終目標は何か
なぜ広告をつかうのか?
広告を使う理由
普段、私たちは暮らしの中で、さまざまな広告を目にします。しかし、目にした広告の大半は、記憶に残らずに忘れ去られてしまうものです。
例えば、普段の生活でテレビCMやラジオCMを目にしたり、耳にしたりすることがあります。
朝起きて新聞を開けば、チラシが折り込まれています。それだけでなく、朝食を食べながらテレビをつければテレビCMが流れ、出勤の車内ではラジオCMが聞こえてきます。職場に着けば、新聞や業務で使う雑誌にも多くの広告が掲載されていますし、パソコンで調べ物をしていれば、頻繁に広告が表示されます。私たちの暮らしの中には、これほどまでに多くの広告があふれているのです。
一説によると、人は1日あたり4,000件から10,000件もの広告を目にしている(接触している)と言われています。消費者に届けられる広告の数は膨大です。
それでもなぜ、これほど多くの広告が世の中で使われ続けているのでしょうか。その理由は、広告が消費者に与える影響が非常に強く、認知拡大に欠かせないからです。
たとえすぐには記憶に残らなかったとしても、いつか必要になったタイミングで「あの時、CMを見た気がする」と、わずかでも思い出してもらう。企業は、そうした可能性に懸けて、広告を出しているのです。
企業がそれほどわずかな可能性のために多額の費用を投じて広告を出す理由。それは、認知が売上の一番のボトルネックになるからです。
売上は大きく3つの要素によって左右されます。「認知率」「配架率」「プレファレンス」です。
1. 認知率
商品がどれだけ多くの方に知られているかという指標です。人は認知していない商品を購入することはできません。物を買ってもらう前に、まずは認知という形で自分たちの商品について知ってもらう機会が必要です。認知が高ければ高いほど、商品が購入される確率は上がります。
2. 配架率
ただ認知されているだけでは物は売れません。お客様の目の前に商品があり、購入できる状態でなければいけません。
(a) 店頭における認知:パッケージがどれだけ目に触れるか、ポップアップ等の情報があるか、あるいは道中でテレビやラジオのCMに接触しているか。
(b) 店頭における配架:ちゃんとお金を出して買える状態にあること。品切れになっていたり、特定の地域で買えなかったりするのは問題です。物理的に購入できる状態に持っていくことが、この配架率の役割です。
3. プレファレンス(好意度・選ばれる確率)
複数の候補(選択肢)がある中で、自分たちのものが選ばれる確率のことです。これが最終的にマーケティングにおける決定打となる要素になります。
例えば、スーパーの店頭に3種類の緑茶(おーいお茶、伊右衛門、綾鷹)が並んでいたとしましょう。スーパーの店にこれら3つとも置かれているという状況は、「認知率100%」「配架率100%」。つまり誰もが知っていてどこでも買える状態にあるとき、その選択肢の中から「どれにしようかな」と選ばれる力がプレファレンスです。
ただし、プレファレンスはあくまでお客様の選択肢に入ってからの競争です。選択肢に入る前段階として、認知率を高めておくことと、商品が実際に店頭に置かれていることが極めて重要になります。
店舗事業においては、配架率はお店の商圏のカバー域に該当します。商圏の範囲の中に住む住民は「配架率100%」の状態ですから、その商圏内での認知率が重要になってくるのです。
そして、認知率を高めるために役立つ手段が広告ということです。ですから、多くの企業は競って広告を出していますし、消費者に届けられる広告の量は毎日4000~1万件という膨大な数にのぼります。
適切な広告予算
広告費の予算
出店戦略において、適切な広告予算をどのように設定するかは非常に重要な問題です。
一般的にどのような事業モデルであれ、売上に対して10%から15%は販売促進の予算を確保しておくのが望ましいと言えます。これには明確な理由があります。多くの場合、広告予算を事前に組んでおかないと、経営判断として「広告はやらなくていいのではないか」という方向に傾きがちだからです。
そのため、1年間の計画を立てる際や決算などの要所要所で、1年分の広告予算を事前に設計し、その予算を必ず確保してください。これを怠ると、経営者は広告予算を削って利益に付け替えたり、従業員に還元したり、あるいは新製品の開発といった「集客や認知拡大に直接関係のないもの」に回したりするなど、様々な形で予算を流用してしまいがちです。
広告予算の設定におけるポイントは以下の通りです:
1. 予算確保の優先順位
広告予算は後回しにされやすいため、先に確保しておくことをお勧めします。売上目標に対して10%から20%の予算を差し引いても、十分に成り立つビジネスモデルであるかどうかが重要になります。
2. 予算の目安
- 標準的な目安:概ね10%~15%程度と見ておくと良いでしょう。実際には、広告を増やす過程で集客が大きく伸び、予算を使い切らないこともあります。
- 最低ライン:少なくとも5%は確保しましょう。ただし、5%というのはかなり少ないラインだと認識してください。
一般的に消費者向けの商品を扱う業界では、広告費として売上の10%程度を投じているのが通例です。知名度のない中小企業であれば、なおさら広告費をかけなければ認知されません。
したがって、自身の事業モデルに対して10%から15%を目安として、広告予算を事前にしっかりと組み込んでおきましょう。
最も認知拡大に役立つ広告
少し意外に思われるかもしれませんが、最も認知拡大に役立つ広告とはテレビCMです。テレビCMは一度の放送でリーチできる数、つまり広告を見てくれる人の数が最も多く、それを一人当たりの金額に換算すると、最も安上がりになる広告だからです。したがって、認知拡大において最も効率が良い方法はテレビCMだと言えます。
テレビCM以外の媒体についても検討してみましょう。テレビCMを1回放送する場合、地域にもよりますが、一人に情報を届けるのにかかるコストはわずか0.5円から1円以下で済むケースが多くあります。これは地方に行けば行くほど顕著な傾向があり、地方のテレビ局は広告枠を安く買えることが多いです。テレビの視聴率は今でも10%以上はありますし、少なく見積もってたとえ3%や4%だとしても、これだけの数値(コストパフォーマンス)になります。広告として非常に優れているのがテレビCMの特徴です。
一方で、テレビCM以外の広告では、一人に情報を届けるコストが段階的に上がっていきます。
1. チラシ
一人の家にチラシを届けようと思うと、印刷費やポスティング費用を含め、2026年の現時点では安くても8円、相場としては10円ほどのコストがかかります。
2. リスティング広告
1クリック100円程度が相場です。広告の先にあるランディングページを見てくれる人を一人獲得するのに100円かかる計算になり、コストとしては高めです。
3. YouTube広告・SNS広告
比較的安く収まる傾向にあり、一人に情報を届けるコストは1円前後が相場だと言われています。
認知率を高めるためには、なるべく多くの方に安く情報を伝える必要があります。その効率から考えると、安い順に「テレビCM」「SNS・YouTube広告」「チラシ」「リスティング広告」という優先順位になります。
だからこそ、認知拡大において一番効率が良いのはテレビCMだということを頭に置いておきましょう。ただし、それでもテレビCMを打てないケースは存在します。
(a) ビジネスモデルの規模
事業規模が小さく、テレビCMを打つほどの規模ではない場合。
(b) ビジネスの範囲
例えば、東京のテレビ局にテレビCMを頼むと関東一円に放送されます。この場合、関東全域に店舗を持っていないと、認知はされてもお店が遠くて誰も来ないという事態になり、非常にもったいない(非効率な)状態になります。一方で、小さな都道府県単位の放送局にCMを依頼すれば、自分たちの商圏のサイズで放映が可能です。
自分たちの店と関係のない地域にまで広告が届いてしまうのであれば、他の手段を取るべきです。「一番安上がりなのはテレビCMである」という前提に立った上で、エリアの不一致などで効率が悪くなることが分かっているのであれば、SNS広告やYouTube広告、あるいはチラシといった別の手段を選択しましょう。このように状況に応じてやり方を変えていく発想で、メディアプランニングを進めていきます。
どの広告媒体を使うべきか?
どの広告媒体を使うべきかは、多くの経営者にとって長年の課題です。筆者はこれまで、看板やのぼりといったいわゆる販促物から、チラシ、テレビCM、ラジオCM、さらにはGoogleマップやウェブサイト、Google広告といったウェブ系の施策まで、オンライン・オフラインを問わずあらゆる販促物を経験してきました。
どの広告を採用すべきかは、業種業態やその店の体力などに大きく左右される要素であるため、一概には言えないところがあります。しかし、大きく分けると次の3つのステップで考えていくのが望ましいでしょう。
①無料でできる販売促進
最初に取り組むべきは、無料でできる販売促進のツールです。一般的に使われるのは次の2つです。
- Googleマップ
- ウェブサイト
他にもInstagramのように、お店の情報をまとめてインターネット上で提供できるツールは無料で使えるものも多いため、ぜひ取り組んだほうが良いでしょう。
特にお伝えしておきたいのは、店舗を経営される際はGoogleマップへの対応は必須であり、必ずやらなければいけないということです。Googleマップの集客力には、消費者の一般的な感覚を大きく凌駕するものがあります。
Googleマップの対策については、この記事の中では詳しく述べませんが、基本的には「口コミをたくさん集める」というやり方で進めていけば問題ありません。なるべく多くの口コミ、特に喜びの声や素晴らしいサービスの体験を書き込んでもらうことが一番重要です。
②低予算でできる販売促進
Googleマップやウェブサイト、Instagramのように、お店の情報をインターネット上で伝える要素を先にやった上で、次に「低予算でできる販売促進」に取り組みます。
低予算でできる販売促進には多くの種類がありますが、いくつか挙げておきます:
- 看板(店頭の看板)
- のぼり
- タペストリー
- チラシやポスター
- イベント
特にここで注目しておきたいのは「イベント」です。
既存のお客様はもちろんですが、お客様になる前の方たち(未顧客)にも店に来ていただくことは、その後の集客において非常に有益です。
例えば、筆者が以前支援していた葬儀社では、葬儀会館をオープンした直後に「内覧会」というイベントを開催していました。ピカピカの会館を近隣の方に見てもらうためのもので、3日間で300人から400人も来場する大きなイベントでした。
これによって、来場したお客様とお店の間に関係性が生まれます。「あそこはいい会館だった」という記憶が残れば、地域の方が葬儀に直面したときに「あそこのイベントに行ったことがあるから、あそこに行ってみようかな」という気持ちになります。
こうしたイベントを定期的に開催し、何度も店に足を運んでもらうことで、「ここの人たちは本当にいい人たちだから、絶対ここでお願いしよう」と気持ちが強化されていきます。
逆に、「関係のない人は店に来ないでください」というスタンスを暗に近所の方に伝えてしまうと、いざ必要になったときに「あのお店はあまり良くないから選ばない」ということになり、関係性が築けません。大事なのは、お店とお客様との間にきちんとした関係性を作ることです。その重要な役割を果たすのがイベントなのです。
業態によってイベントの内容は異なります:
- 賑やかな内覧会のようなもの
- 塾やスクールの場合は、無料の説明会や体験会
このように、知恵を使ってイベントを考えて取り組むことが、低予算でできる販売促進の2つ目のポイントとして非常に役立ちます。
お客様だけでなく、「お客様になる前の、まだ関係性のない人」まで巻き込むイベントや、接触点をつくりましょう。
③有料広告
無料でできる販売促進や低予算のツールを十分に活用した上で、有料の広告を検討することが望ましいです。有料広告とは、より多くの人に店舗を知ってもらうという「認知率」を拡大するためのものです。
一般的に、テレビCMやラジオCMは広範囲にアプローチできますが、店舗ビジネスにおいては範囲が広すぎる場合があります。そのため、より限定的な範囲で実施できる広告を選ぶ必要があります。
具体的な選択肢:
- 毎月のチラシ
- SNS広告
- Web広告
- テレビ・ラジオCM
- 雑誌広告
- 新聞広告
新聞広告や雑誌広告は、店舗の場合は効果が薄いケースがほとんどです。特に新聞の購読者層は50代以上が中心であるため、比較的若い層をターゲットにするサービスには向きません。新聞広告に予算を割くのであれば、チラシやWeb広告を検討した方が良いでしょう。
有料広告を選ぶ際に避けるべきなのは、店舗の規模に見合わない広告です。広告費をかければ客数が増えるという側面はありますが、例えば年間売上が2,000万円の店舗が1,000万円を広告に使ったからといって、翌年に飛躍的な成長ができるわけではありません。
店の「成長スピード」と「集客スピード」が大きく乖離すると、経営に過度な負担がかかります。集客しすぎると、従業員の離職や経営者の健康被害(多忙による不眠や病気)を招く原因にもなります。広告費は現実的な目標売上に対して、10%から20%程度に留めるのが適切です。
また、商圏の外まで広がりすぎる広告も避けるべきです。以前、ある葬儀社が新しい会館を県内に初めて出店した際、全県を対象に新聞広告を出したケースがありました。しかし、実際のお客様になり得る範囲は、店を中心とした車で15分圏内に限定されることが当初から分かっていました。結果として、広すぎる広告に数百万円を投じても、何の意味もなかったといいます。
広告を展開する領域は、自分たちの商圏の中に留めるべきです。そこからはみ出す場合でも、常に効率性を重視して検討することが重要になります。
広告で何を伝えるか?
広告が伝えなければいけないものは、大きく4つの要素があります。
1. 店名
文字通り、店の名前です。店の名前は、はっきりと目に付く場所に掲載しなければいけません。
しばしば、広告会社のディレクターと相談をするとき、「店舗の名前をここに表示されるとデザインの一体感が損なわれる」という指摘を受けることがあります。ですが、たとえデザインの一体感が損なわれたとしても、店舗の名前ははっきりと目に付く場所に示しておくことが大切です。
広告は、店を認知してもらうことです。店の認知の基本は「店名」です。デザインではありません。
2. 店のカテゴリー
カテゴリーとは区分。つまり「どういうジャンルのお店なのか」を広告で伝える必要があります。
人は、物事を瞬時に理解するために「カテゴリー」という手法を使います。たとえば、昼休みのランチで何を食べるかを考えるとき、頭の中に「牛丼、ハンバーガー、弁当」などのカテゴリーが思い浮かびます。そしてカテゴリーの中から1つ選び、その商品を購入できる店舗へ向かいます。
そのため、店名とカテゴリーはセットで認知される必要があります。
3. 店の独自性
例えば、有名な牛丼チェーンには吉野家・すき家・松屋があります。この3つの店舗が隣り合って並んでいるのを想像してみてください。今日のランチで、あなたはどの店に入るでしょうか?
その時に決め手となるのが「独自性」です。吉野家とすき家と松屋はいずれも牛丼屋ですが、店ごとに異なる性質があります。
たとえば吉野家は「うまい、やすい、はやい」。仕事と仕事の僅かな休憩時間の間に、さっと入って食べることができる店というイメージを広告で発信しています。もともと築地のせっかちな魚河岸の男たちを相手にした商売ですから、仕事中の昼食には吉野家が選ばれやすいでしょう。CMでは、タレントの藤田ニコルさんが「店員役」として登場します。もちろん女性の顧客を増やす狙いもありますが、基本的には一貫して働く男たちに喜ばれやすい明るいキャラクターだから選ばれていると思われます。
一方ですき家のテレビCMは、石原さとみさんが「客」として登場します。また、商品ラインナップを季節に応じて頻繁に変更するなど、「仕事中の昼食」以上のファミリーレストランという側面を強調することで、吉野家や他店との違い(=独自性)を強調しています。
松屋は、牛丼チェーン店として先行する吉野家とすき家を猛追するべく、世界各国の郷土料理を期間限定で商品化するという珍しい取り組みで独自性を発揮しています。
数ある競合店の中から自分たちの店を選んでほしいわけですから、他とどう違うのかを伝える必要があります。これが店の独自性です。
4. 場所と営業情報
場所や営業時間の情報です。場所は、お客様が行く店を選ぶ際の最も重要な判断材料の一つになりますので、必ず伝えなければいけません。あわせて、営業中かどうかの補足情報も入れておくと親切です。
まとめると
- 店名
- 店のカテゴリー
- 店の独自性
- 場所と営業情報
この4つを、広告で伝えなければいけません。
消費者の意思決定のしくみ
消費者の頭は「大きなものから小さなものへ」という流れでものを考える仕組みになっています。
例えば、お昼ご飯に何を食べようかと考えたとき、まず頭の中にハンバーガー、ラーメン、和風の定食といったいくつかの選択肢が浮かびます。その中からジャンル(カテゴリー)を絞り込むのです。
カテゴリーを決めた後の流れは以下の通りです:
1. カテゴリーの決定
例として「ラーメン」を選んだ場合、次に「どのラーメン店があるか」を瞬時に考え、候補の中から店を選びます。
2. 個別店舗の選択
「ハンバーガーを食べる」と決めたからこそ、他の選択肢が排除され、「モスバーガーに行こうか、マクドナルドに行こうか」という比較が始まります。
もちろん、ジャンルと特定の店舗を混同して考えるケースもありますが、それも思考が複合的になっているだけで、原則は変わりません。うどんを食べようと思えば近所の「丸亀製麺」に行きますし、ハンバーガーを食べようと思えば「マクドナルド」に行きます。
もし近所にマクドナルドとモスバーガーがあるなら、まず「ハンバーガー」を選んだ上で、どちらにするかを決めるわけです。ですから、マクドナルドとモスバーガーと丸亀製麺を、最初からすべて横並びで検討することはありません。
まずは、コンビニやファミレス(ガストなど)といった選択肢の中からカテゴリーが選ばれます。このように、人は意思決定において、大きな枠組みから詳細へと判断を下していくのが基本的な流れです。
人は、自分の現在地が店から近いか遠いかというものを非常に重視します。店まで徒歩20分や30分もかかるような場所へ行くのは、相応の時間があるからこそであり、そうでない場合はなかなか足を運びません。「店から近いか遠いか」という判断材料を、人は無意識のうちに持っています。
ですから、店側は自分たちの場所がどこにあるのかを、きちんと伝えなければいけません。例えば、店舗の周辺にチラシを入れるのであれば、「あなたの家からこれだけ近いですよ」ということを明確に伝える必要があります。
もし店から遠い場所にいるお客様に来てほしいのであれば、そこには相応の「理由」を作る必要があります。遠隔地からも大きく集客できるのは、例えばららぽーとのような巨大な複合施設や、ディズニーランドのような日本に一つしかないタイプのテーマパークです。これらは「年に一回の特別なタイミングでしか来ない」ということを分かった上で、広い領域に集客を行っています。ららぽーとの場合であれば、「週末のお出かけに来てください」「一日中遊べますよ」といった訴求をするわけです。
しかし、通常の中小企業の場合は、遠方からわざわざお客さんが来るということは考えにくいのが現実です。もちろん、評判を聞きつけて遠くから来る方も一定の割合でいますが、その方たちが主体になることは絶対にありません。
まずは近場からしっかりと足固めをして、自分たちの店の近くにいるお客様を確実に確保することに取り組むべきです。そのためには、お店の場所を地図入りできちんと伝えることが、何よりも大切です。
広告の目標とは?
最後に広告の目標についてです。
店舗を運営している経営者に「広告を出して何をしたいか」と尋ねると、「売上を上げたい」あるいは「集客のためにもっと多くのお客さんに来てほしい」と言われることが多いのですが、そこに広告の目標を設定すると失敗します。
チラシを撒いても集客できない時は必ずありますし、逆にチラシを撒いていないのに集客できる時も必ずあります。これは消費者の目に見えない動きに振り回されている状態です。「集客が好調だからチラシをやめよう」とか「不調だから増やそう」と思っても、そう都合よくお客様が来てくれるとは限りません。
覚えておきたい広告の目標というものは、集客や売上のためではありません。広告の目標とは「記憶を植え付けること」です。
1. 広告の究極の目標
特に商圏の中に住んでいる人たちに、自分たちの店舗のことを知ってもらった上で、その存在を頭の中にしっかり植え付けていただくことが重要です。
- 店名(店の名前)
- 店のカテゴリ
- 店の独自性のポイント
- 店の立地(どこにあるのか)
この4つは、原則としてどんな広告にも掲載する必要があります。
2. 体験を通じた記憶の定着
実際にお店に来ていただいた方には、次のような要素まで知ってもらい、店にまつわる記憶を地域の方になるべく多く持ってもらうことを目指します。
- 店の接客や雰囲気、価格帯
- 店で味わった体験
- その店でサービスを体験したことや、誰かと過ごした様々な思い出
広告を出してからお客さんが来るというのは、最終的に巡り巡ってくるという非常に長いスパンの話です。「このチラシを出せば絶対売れる」「この広告を使えば必ず客が来る」といったV字回復のような現象は、基本的にはあり得ません。
店の都合で客が増えたり減ったりすることはありません。常にお客様が自らの意思で来店しているはずですから、あくまで「お客様の都合」なのです。お客様の都合を店の側でどうこうすることはできないと思ってください。それをコントロールしようとするのは経営者の傲慢です。
3. 広告効果のメカニズム
何度も広告やお店の情報に接触することで、お店とお客様との間に見えない絆や関係性ができてきます。その関係性が、広告を見た1ヶ月後、3ヶ月後、あるいは1年後や10年後のどこかのタイミングで来店につながります。
- 一度来店した方がリピーターになれば、広告の効率は高まっていく
- 店の成長とともに、売上に対する広告予算の割合を減らしていくことができる
- 広告費の額自体は増えても、売上比率としては抑えられていく
広告の目標とは、究極は「記憶」です。店舗の周りに住む人たちに自分たちの記憶を持ってもらうこと。これこそが広告の役割なのです。
投稿者プロフィール

- 出店戦略コンサルタント
- 船井総研出身の経営コンサルタント。前職では葬儀社を対象に「家族葬専用式場」の出店を全国で後押し。事業戦略の立案からプロモーションの実行まで一貫した支援で総額数十億円の売上に貢献した。 独立後は、「100年続く事業をつくる」を理念に掲げ、幅広いサービス業の売上・利益・生産性向上を支援する。戦略や計画のみならず、チラシ・WEB・テレビCMなどのプロモーション施策を網羅し、特性に合わせて提案できる全国的にも希少なコンサルタント。
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